サマーウォーズ

 細田監督が好きなので見に行った。これも結構前だなあ。
 「田舎で少女が旗持って電脳戦をする」イメージで観にいったら、「数学オリンピックに出損ねた数学オタク高校少年が、あれよという間に大活躍」という内容でビックリした。映画のイメージ広告は正確にしてほしい。
 「ぼくらのウォーゲーム2.0」といった感じ。なんかこう、一度みたなあこれ、という。特にラスト近くの花札で、世界中からワーッと人が集まってくるあたりがもうそのままで、こんなラスト展開が丸々かぶってていいのだろうかと心配してしまった。
 アニメーションとしての演出が非常に優れていて、主人公が暗号を相手に夜を徹してしまうときの静謐な雰囲気であったりとか、キングカズマのアクションの重量感であったりとか、ここらへんは「さすが」の一言になる。アニメ好きは作画だけで見に行って十二分に元がとれる。ハッキリ言って、出だしの10分そこら(真田家につくまで)で1800円出す価値がある。
 ストーリーはかなり盛り上がるものの、結構うすっぺらい。全体的に人物の掘り下げが足りないんじゃないかなあと思った。たぶん登場人物が多すぎるんだろう。カズマくんとかはアクションには必要だけど、ストーリー上はとくに必要ない。そういうキャラが多い。ヒロインとかも省けると思う。あれもこれもとやってしまっているせいで、焦点がボヤケている。絶滅危惧種となっている大家族を描きたかったのかな? それとも、大家族と最近のネットコミュニケーションを対比して描きたかったのかな? 大災害にも関わらず死人が出なかったり、大家族のわりには内部がドロドロギスギスしてなかったり、相当に手ぬるいストーリーではある。現実的な側面を排除して、じゃあ何に焦点を当てたかったんだろうか?
 少し興味深かった点として、対面も手紙も電話もメールも匿名掲示板もTwitterも、あらゆるコミュニケーションが出てくるけれど、とくにどれが一番いいという描写はされていない。それぞれに良さがあって、それぞれに限界がある。ついついどれかに寄った描き方をしがちなところ、この中立さはなかなか面白い。
 RSA暗号?を筆算で解いてしまう少年はギャグなんだけど、リアルタイム自動翻訳で全世界の人が自国語でチャットできるというのも結構ギャグだと思った。あれはべつに英語とかハングルとかそのまんまでよくて、というのは、たとえ読めなくても、展開的に意味は想像つくんだからさ。
 まとめると「とても面白いし、とても盛り上がるんだけど、なんかこうちょっともうなんか少しなんとかならんかったのか? ストーリー」といった感じ。でも面白いよ。