小人閑居せずして無為を為す
六本木一丁目の改札は泉ガーデンというビルに直結しており、そのビルの一階にはPAULというパン屋がある。改札から出てわずか10秒で店にたどり着ける。今日はそこでパンを買って、職場にいくことにした。
オリーブを巻きこんだフランスパンに、モッツァレラとトマトのバジルソース和えが挟んである。おいしそうでしょ? おいしいのだ。しかし値段も張る。798円。そう、798円だ。
僕は土日に職場にいくときは、ちょっとした贅沢をすることにしている。何かを買うのだ。スターバックスの無意味に高いコーヒーか、無印のクランベリーヨーグルトチョコだったり。あるいは通勤中に読むラノベか、漫画か。ささやかな贅沢だ。
中高生のころ、ささやかな贅沢といえばラ王だった。土曜日にいつも食べていたのはカップラーメンで、それというのはカップラーメンであれば150円で昼飯一回分のカロリーがとれるからだ。たまにラ王で250円使うのが、僕の贅沢だった。この基準で言えば、吉野家の牛丼ですら高級品だった。400円もするんだぜ、これ!
みみっちくはあるけれど、そのみみっちさによって、小さな幸せというのは支えられている。僕はラ王にもスパ王にも豪華さは感じなくなってしまったけれど、ささやかな嬉しさにまだ見捨てられていないことに、感謝したい。