白昼の残月

 今川監督の鉄人映画を見てきた。
 戦後復興が戦争の傷痕を覆い隠そうとしている昭和。少年探偵・正太郎のもとに、戦死と思われていた兄、ショウタロウが復員する。鉄人の本当の操縦者である彼の帰還とともに、東京に埋め込まれた廃墟弾が、その名のとおり町を廃墟にしていく。正太郎の手を離れて勝手に廃墟弾を掘り出していく鉄人。そして弁護士の死体。犯人は謎の復員兵。遺された紙には「正太郎に鉄人を操る資格なし」という言葉とともに、「残月」との名乗りがあった。廃墟弾を狙って忍び寄るアメリカのハゲタカたち。命を狙われる正太郎。兄・ショウタロウは何を目論むか。残月とは一体何なのか!?
 265文字。100字あらすじにはまだまだ遠いなあ。
 今川監督について、別に詳しいわけではない。GロボとTV鉄人しか見たことがない。だけど、監督の作品に描かれる苦しさとか、弱さとかが僕の印象には強い。Gロボの鉄牛が、大作のことがほんとうに嫌いだったと言いながら歩いていくシーンが大好きだ。TV鉄人で、命からがら戦地から帰ってきたら、京都が何も変わっていなくて、だから燃やしたんだという言葉が、よくわからないけれど、よくわからないなりに胸を打っている。監督の描く物語は、ロジカルでは納得いかないことも多いけれど、ダイレクトに心を揺さぶる何かがあることはたしかだ。
 ショウタロウの情けなさも、母の犯行も、納得のいかないところはある。冷静な傍観者として、彼らに完全な感情移入はできない気がする。だけれども、だからこそ、そこには確かな心があったんじゃないか、とか思う。
 白昼に残る月、残月。心に余韻を残す、いいアニメ映画だった。