古めの映画を見る

 朝から撮りためたアニメの消化を行い、散髪に行き、昼寝をし、カツ丼を作って食いながら再びアニメを消化していた。もう国家対抗競技大会とか完全に頭から消えていたそんな午後3時、また一回分ナディアを見終えてHDDを停止させると、画面になんだか明らかに古そうな映画が映し出された。たまたま合っていたチャンネルがBS2で、たまたま古い名作映画を放送していたのだ。BS2はよくこういう特集を行う。毎回逃さず見ていれば、一年もたたずにちょっとした映画マニアになれるだろう(そしてますます孤独になるのだ)。
 飛行機の重量を軽くすれば、飛距離は三倍になる――つまり、パリだ。画面の中の男が軽食堂でそう言い放っていた。そのシーンですぐに、あ、つまりこれはリンドバーグがパリに飛んでいく話なんだ、とわかった。男は飛行機を買うための金策に有力者を訪ねたり、飛行機組立工場で一緒に働いたりする。男たちは飛行機を組み立てる。そして彼は一人飛ぶ。睡魔との戦いの末、パリに到着する。さあ、くるかあの名台詞……。しかしあの有名すぎる言葉は口にされない。あれ、聞き逃したかな、あんま眠そうだったから僕も眠くなってたもんな。映画は僕の期待を裏切ってスパッと終わり、もやもやした気分のまま新聞をめくって映画のタイトルを調べる。
 「翼よ、あれが巴里の灯だ」
 映画のタイトルで既に言っていたのだ。なーんだ。そうか、今見た映画があの映画だったのか。これだから昼時のBS2は油断できない。


 リンドバーグが大西洋を横断飛行したのは1927年だ。フィッツジェラルドヘミングウェイなどのロスト・ジェネレーションと同世代ということになる。虚無的な影を含む絢爛豪華なアメリカ繁栄の時代だ。パリから帰り一躍スターとなった彼は、あくまで謙虚な姿勢を貫いたという。いい人である。映画の中でもそうだった。
 周囲に踊らされない人間に僕もなりたい。