中秋の十六夜

 一日過ぎてしまったけれど、なかなかいい月だった。中秋の名月は見逃したけれど、今日の十六夜は帰り道の夜空に雲ひとつなく南天してくれていた。ずっと見上げながら歩いていたから、ちょっと首が痛い。
 いざよい、ということばは興味深く響く。満月からある意味ではもっとも遠く離れた月が十六夜であり、没落の始まりであり、新生の始まりでもある。詩的な感情を呼び起こすものがあるから、特別な名前をつけられてきたのだろう。
 僕にはやっぱりウサギには見えない。ヨーロッパでは蟹に見るらしいし、実際そう見えなくもないけど、それはそれでなんか味気ないなあ。