AURA

 中学時代の三年間に厨二病の行き着く果てまで駆け抜けて、高校から真人間デビューを企てた主人公。しかし、夜の学校で出会った青い魔女がすべてをひっくり返して、主人公はクラス社会の最底辺にまで引きずり込まれてしまう。 
 このラノベは個人的にとても面白かった。駅を二駅乗り過ごしたのは久々の快挙だ。
 誰もいないところで、右ストレートの素振りをしたことがあるだろうか? その右ストレートの威力はどんなものだろうか。町のチンピラを一撃でノックアウトするくらい? それとも音速を超えた衝撃波があたりをなぎはらうくらい?
 かめはめ波のポーズをとったことは? 霊丸なら撃てるかもしれないと思った? スタンドがもしも万が一発現しちゃったらどんな能力になるかな? どんな能力がいい? やっぱり名前は洋楽からつけるんだろうか。
 誰だって妄想のひとつはしたことがある。もちろん、その妄想をいちいち押し出したりはしない。論理的な意味で信じたりはしない。スタンド使いはいないし、かめはめ波は出ないし、僕のこぶしで壁をなぐったら痛むのは僕のこぶしの方だ。
 それでも、ジョギングの最中にかるく拳をふるってみる僕がいる。何もでない。拳に重なってクレイジー・ダイアモンドも出ない。それでもふるってみる僕がいる。いい年をして。
 行過ぎた厨二病を否定されるものだ。しかし、クライマックスで主人公が必要とする勇気を与えてくれるものは、案外、妄想による自己陶酔だったりするんじゃないかな。人間はちっぽけなので、俺はやれる俺はやれると思わないと、何もできないのだ。
 ところで、魔女が才色兼備だとかクラスに人徳者がいるとか、かなり条件甘いよねコレ。状況パラメータを少しでも厳しくしたらあっという間に破綻しそう。ラノベだと選択肢がないからバッドエンドが書けないのか。
 あと、挿絵の人が上手い。日本のアニメーターってすごいね。