明日なき暴走

 うちの会社のうちの部署には、新卒交流会というのがある。交流会といっても、1人VS新卒全員の講演形式で、一年上の期の人(僕らのことだ)が新卒になんか訓示っぽいものを垂れて、質問を受け付けるという内容だ。だいたい30分から1時間くらいの勝負となる。どうにも進まない新卒とその他の交流の一助として、あるいは一年経ってダラけた僕らへ緊張感を与える手段として存在している。
 今日は僕の担当だった。
 適当に会社の理念とか製品の理念とかを語って、「まあ社会貢献してると思えばそれなりに働く元気が出なくもないよね」とかそんな話をする。もっと明るい話にするつもりだったのだが、どうもネガティブな方へ話が勝手に転がっていく。昨日10分で作った台本ブチ壊しだ。「終電帰りの慰めぐらいにはなるね」もうどうにでもなれ。
 んで、質問開始。
「5年後の自分を描けと講義で聞いたんですが――」
 来た。
「ケニヤさんは5年後の自分とかどうなってると思いますか?」
 来たよ。
「僕にそれを聞くか」
 思わず逆ギレする俺。「僕の将来とか白紙だから、なんつーか、ほら、あれだよ。未来は無限の可能性があるってやつだよ。ははは」
 そのあとも俺絶好調。
「公園のベンチで15分も空を眺めてれば『あー、仕事でもすっか』という気分になれる」
「毎日仕事してりゃあ、習慣になるから会社に行くのに疑問を感じなくなる」
「モチベーションなどあって無きがごとし」
「はっはっは」
「はっはっは」
「はっはっは」(笑いで全てを誤魔化そうとしている)


 ちなみに自虐トークは大層ウケて、笑いだけはどっかんどっかんとれた。そしてルールどおり、このタワけた会議の議事録が部署全体にメールで共有された。若干、自殺について真剣に考えてみる24の夏。
 最近、自殺は罪ではないと考えるようになってきた。僕はするつもりはないけれど、自殺は自殺でアリじゃあなかろうか。どうせ死ぬわけだし。