筋肉少女帯 「月光蟲」

月光蟲
 だいぶ前から、聴いて楽しかったCDとかの感想を書きたかったので、この機会にやってしまおうと思う。
 筋肉少女帯はメンバーの見た目があまりにも奇抜だし、なんかメタルだし、あんま聞く気になれないかもしれないが、ネガティブなオタクにとってはかなりオススメできるグループである。詩を書くのが駄目人間なので、聴く方も駄目人間である方が望ましい。
 別に彼らの出したCDを全部聴いたわけではないけれど、ランキングするなら

  1. 月光蟲(イワンのばか)
  2. サンフランシスコ・テン・イヤーズ・アフター(サーチライト)
  3. ステーシーの美術(銀輪部隊)

 の三枚だろうか。右はその中で選ぶならこの一曲。
 月光蟲が特に好きなのは、このアルバムに含まれる曲の歌詞がよくわからないメタファーに満ち溢れていて、詩の主張がよくわからない点にある。たとえば、「風車男ルリヲ」の中では「楽しかったあのころが戻ってこないのも やっぱり風車男のせい」と歌い、「今すぐ風車男を殺しにいきなさい」と煽り、「でも、風車男には首が無いんだ」と落とす。つまりこの風車男ってのはナンなのだ? 個人が敵うことのない社会というバケモノなのか? それとも責任転嫁を試みる人の悲しい性なのか? 明確な答えがないから、僕は自分が気に入った答えを正解ということにして、気持ちよく聴く事ができる。
 これが小説というやつだ。好きに読める。教訓も要らないし、主張も要らない。筋の通ったストーリーさえ要らない。重要なのは想像力を刺激してくれることなのだ。演奏が広げる世界に心酔できればそれでいいのだ。そして最高なことに、筋肉少女帯の演奏の腕は確かなのだ。
 「駄目なりに前に進もう」と歌う後期の筋肉少女帯も悪くないのだが、どこか投げっぱなしな月光蟲が僕は好きだ。