胸キュン?

 渋谷で麻雀やってから解散、僕は田畑から北上する京浜東北線に揺られていた。年末の夜、電車の中は込み合っている。車両が東十条を出たとき、僕はドアから4歩ほど入り込んだところにアテもなく身を押し込んでいた。
 そのとき、ドスンと肩に何かが当たる感触があった。
 女の子が額を乗っけてきていました。肩とかじゃなくて、額。頭ですよ、頭。頬とかじゃなくて額。何考えてるんでしょうこの子。最近の子はわかりません。昔の子もわからないけど。
 きっと疲れているのでしょう。僕の肩くらいどうぞ使ってください。そう思って、ほおっておいたんです。そしたら。
 すりすりと、コートのすそをつまんで遊び始めました。生地をすりあわせています。すりすりと。サテンのコートを。ほんと、何考えてるんでしょう? もうさっぱりわかりません。酔っているのかな?と思って顔をうかがってみると、もう全然フツー。むしろメガネかけてて、結構かわいい。むしろかわいい。
 そのままほおっておいたら次は何をするつもりだったのか?(あるいは財布でも狙っていたのだろうか?) 僕もそれが知りたかったのだが、残念ながら赤羽で人の流れに押しやられて、彼女とは位置が離れてしまった。そして彼女は西川口で降りて行って、尋ねるチャンスも永遠に失われてしまった。
 年末はちょっぴり胸キュンである。面白い子だった。