引き出しに埋まる文房具を点検してみた

 9月の2日になっても、ハリポタ5巻をうっちゃっていた。モチベーションが上がらない理由のひとつは、どうも日本語版が出るまでに読み終えることができそうにないことであったが、それにしてもいまだ一ページ目の一単語目すら目にしていないのはちょっとどうかと思う。よし、いい加減読み始めよう……、そう思って目にするのは我が机の乱雑さである。以前ここで部屋掃除をして安い感傷に浸った話を書いたが、あれはあくまで部屋の床掃除である。床を片付けるために本棚などを片付けたこともあったが、机の上はほとんど手をつけていなかった。僕の机にはこの夏からノートパソコンが鎮座しており、その他MD、時計などの雑貨に占められたその空間には分厚いハリポタン・ペーパーバックを置く余地などどこにも見当たらないのだ。12年をともにしてきた学習机は12年間の堆積物が幅を利かせ、ファッキンフリーダム・ノーモアニューカマー・一見さんお断りなのである。引き出しも同じようなものだ。この守りを打ち破って僕の机に侵入できたツワモノはこの数年、ノーパソ以外に見当たらない。
 これではいかん、机たるものシンプルあるべし、と遅まきにして悟った僕はさっそく不要物の処理にとりかかった。しかし、相手は12年間を生き延びてきたサバイバルのプロである。さいとうたかをもビックリなのである。いくら他人が「こりゃガラクタだぁー」と吼えようが、どうしても捨てられないもので構成されているのである。そういうわけで、今回の掃除作戦も今日まで行われてきた作戦と同じく、敗北はもとより定められていたのであった。ガラクタはまるで減らず、やはりハリポタは床にねっころがって読むしかなさそうだ。
 しかし一応文房具専用引き出しの中からインク切れのボールペンなど十数本を捨てることができた。これは近年稀に見る戦果である――……といいたいがそうもいえないかもしれない。何故なら十数本など全体から見てたいした量でないからである。僕は文房具をとっかえひっかえ試すのが結構好きなのだが、いくらなんでも今日の整理で自分の節操の無さと溜め込み癖に戦慄せざるを得なかった。
 以下にその恐怖のリストを記す。

  • シャープペンシル 8本
  • 鉛筆(黒) 16本
  • 鉛筆(赤) 4本
  • ボールペン・インクペン(黒) 9本
  • ボールペン・インクペン(赤) 6本
  • ボールペン・インクペン(青) 4本
  • ボールペン・インクペン(その他) 3本
  • 油性マーカー(黒) 5本
  • 水性マーカー(多種) 4本
  • 蛍光ラインマーカー 8本
  • ハサミ 3丁

 合計 67本と3丁。これは絵描き用の色鉛筆やマーカーなどをさっぴいた数である。このうちの十本二十本がなくなった程度でなんだというのだろう。シャーペンの芯ケースにいたっては空箱含めて11個、中身が残っているので5個あった。とにかく新し物好きで何か目新しいものに飛びつきそして捨てるだけの意思を持てない自分の性格が形になっていて、面白いやら悲しくなってくるやら。捨てられないなら買うな、買うなら捨てろ。それが消費文明という冷酷非常な世界において物を扱うリスクなのだ!
 床に落ちてるのを拾ったシャーペン、筆箱忘れたのでコンビニで買ったシャーペン、昔使っていたけど今は使っていないシャーペン……、こういう些細な思い出を捨てられない人のために、九十九神みたいな妖怪話の復活が求められているのではなかろうか。