古本屋

 日曜、天気もいいので何処かに出かけようかと思い立つ。
 都心の紅葉は来週以降っぽいので、手近な荒川にでも自転車をこいでいく。その途中で、いつも通りがかるだけの古本屋に、何の気なしに入ってみた。
 ご年配のじいちゃんの店のようだ。本は棚におさまりきらず、横積みに天井まで届いていたりする。典型的な「客がいるのを見たことが無い」系の古本屋だ。
 カート・ヴォネガットを(安く)読みたいんだけどなあと探してみたけれど、置いてなかった。というか、「日本の甲冑」だとか「刀剣美術事典」だとか、ゴツイ本が積み重ねられた古本屋である。おい、2万するぜこの事典。誰が買うんだ。どうも美術系に強い古本屋のようだ。
 物色していると、電話がかかってくる。どうやら本を買ってほしい旨の電話のようだ。百科事典を売りたいらしい。じいちゃんはよしなさいと言っている。ありふれていて二束三文にしかならない、がっかりさせたくないから、それは大事にとっておきなさいという。私は関東を束ねる古本屋組合の理事長だから信用しなさいという。……What's?
 とりあえず、目に付いた本を買う。
シャイニング/2001年宇宙の旅/人間以上/鉄の夢/1984年/神々自身/発狂した宇宙/銀河市民/未知の地平線/背徳の惑星/エデン
 セット販売だったのでわりとごっちゃり買ってしまった。ハヤカワSFは図書館に置いてないわ、読みたくても絶版だったりで大変なんだよね。じゃあこうやってごっちゃり買えばいいかといえばハズレもあるし。
 さて、じいちゃん曰く、じいちゃんは日本の古本屋をしきる大御所であるとのことだ。神田の古本街のひとたちは、9割がたじいちゃんの弟子とのことだ。組織運営に疲れたじいちゃんは神田から離れ、そして川口の駅長はじいちゃんのおじさんで、蕨の駅長はとなりに住んでたおっさんだという。
 どこまで信じるかは、まあ、いいや。しかし川口の古本屋に面白い人がいるものだ。