Wiiってほんとに勝つの?

 任天堂の株価が、昨日はやけに上がった。
 1100円(4.5%)くらいだか上がった。単元株の100株を持っているので、つまり11万だけ含み益が増えたことになる(当然かもしれないが、今日は反動で400円ほど下がった)。Wiiへの期待によるものだと思う。実際、予約に行列ができるわ、アメリカでも売り切れ店が続出するわで、大変な人気のようだ。みんなWiiが勝つと思ってるんじゃないだろうか。そりゃ、Wiiが勝てば任天堂株主の僕としても嬉しい。


 しかし、しかしだ。本当にWiiは勝つのだろうか?


 「勝つ」というのは、もちろん他のゲームハードを駆逐して、すべてのゲームを抱え込んでしまうことだ。ファミコンスーパーファミコンFF7以降のPlayStationなどがそれだ。メジャータイトルの出るゲーム機にはさらに多くのタイトルがなだれ込み、ハードメーカーにはロイヤリティがなだれ込む。そして負けハードメーカーに入る金はない。
 Wiiは革新的・・・かどうかはわからないが、非常に面白いハードであることは確かだ。コントローラを振って操作する! ファミコンから発展してきたコントローラ体系を完全にリセットしている。リセットなのだ。タッチパネルと二画面を「足した」DSとは違うのだ。リモコン・オア・ナッシングである(「オアッ」とかそんな掛け声でジョナサンがボクシングをしていた気がする)。Wiiのリモコンは最大の武器であるとともに、最大の弱点でもあるはずだ。
 リモコン投擲事件による器物破損がちょっとした話題になっているが、あれはまあ、どうでもいい。

  • ひとつめ。日本においてあのリモコンを振り回すスペースがどこにあるというのだ?

 そんな広いリビングスペースを持った人がどれだけいるというのだ。いやしませんよ! とくに対戦のときなどは大変だ。テニスで4人同時にできるって? うちの近所の「猫の額公園」でもそんなスペースは確保できまい。

  • ふたつめ。疲れるだろ?

 疲れるのだ。そんな気合を入れてゲームをしたくないかもしれない。

  • みっつめ。ほんとに直感的なの?

 リモコンは直感的な操作をもたらすと言われているが、眉唾物だ。
 まず、解釈の問題がある。ユーザーのリモコン操作は機械に読み取られ、解釈されてゲーム画面に反映されるわけだ。「ん、こいつは今斜め45度の角度でモスクの方角に向けて秒速5センチメートルで波線を描きながらリモコンを移動させているぞ」というのを機械が受け取って、「んじゃ、斬ってることにするか」と解釈する。この解釈がユーザーにとって「正しい」解釈になるかは、ゲームメーカーの尋常じゃないチューニングが必要になるはずだ。たぶん、なかなか上手くは行かない。それに「斬る」動作をしているユーザーが動作途中で「やっぱやめた」となったらどうなるんだ? リモコンの動作可能性は無限大にあるが、メーカーが用意できる解釈はそれほど多くはないだろう。
 フィードバックだって嘘っぱちだ。剣が盾に防がれたとしよう。ほんとなら、剣は弾かれるはずだ。ユーザーの手元には振動があるかもしれないが、しかし動作としては振り切っている。これは自然でない。自然でない=直感的でない。リモコンが再現できるのは振り切る動作だけで、重いものを押したり、抵抗が大きい動作は操作に反映できない。
 そもそも、リモコンに向いていない直感的な動作もあるだろう。とくに移動関係はそうだ。リモコンが提供できる直感動作は「手に持ったものを何かする」に限られるため、たとえばテニスなんかでは移動はオートになっている。しかし全てのゲームで移動をオートにするわけにもいかないだろう。


 以上から、Wiiが本当に勝てるかには僕は懐疑的だ。従来のゲーム方式を打ち破るには、少々力が足りないように思える。(特に海外のXBOX360を凌駕できるかにはかなり疑問だ。)或程度は売れるだろうが、しかしゲーム業界を席巻するかといえば、しないんじゃないかと思っている。案外、リモコンタイプのゲームより、ゲームキューブのコントローラを使ったゲームの方が増えるかもしれない。


 しかしながら、こんな言葉もある。「百聞は一見にしかず」。やってみなければわからない。
 なんだかんだ言いつつ、僕はWiiを買う予定だ。
 近所のトイザラスにも電話をかけてみた。当日販売は118台だそうだ。電話に出た女の子(僕の脳内では女の子ということになっている。それも可愛い子だったりする)は、少しうわずった声で118台だとか、当日の販売方式だとかを、こちらが聞く前から教えてくれた。似たような電話が多くて、マニュアル化されているのだろう。まったくたいした人気ぶりだ。今日の日記は、まあ、それで買えるかどうかわからないという加熱っぷりに嫌味を言いたいから書いただけでもある。Wiiが、本当にゲームの可能性を広げてくれるのかどうか。なかば疑いつつ、疑った方が楽しめたりするしと期待しつつ、明日無事に入手できることを祈ることにしよう。