連休を堕落に潰そう

 男子の部屋は、臭い。
 僕は別段不清潔な生活をしているつもりはないが、ゴニョゴニョの後始末をサボっていると、なにやら菌糸類のかおりが部屋に充満してくることになる。後始末とは、使用後のティッシュをすみやかに風通しの良い居間のゴミ箱に捨てることであるのだが、まあ、一人でゴニョゴニョしたあとはそういう細々したことをする気力がないというのは男性諸君には理解していただけるだろう。夏場となると寝汗をだいぶかくし、そういう匂いも部屋にしみつくものだ。
 朝起きて深夜まで仕事のため、部屋の窓を開けて換気する機会が少ないし、そもそも僕の部屋の窓はそれほど大きくない。マンションの廊下に面しているため、窓を開ければ廊下を歩く人から部屋丸見えという環境もある。窓は開けても効果なく、そもそも心理的に社会的に開けにくい。
 そういうわけで、僕の部屋は臭い。
 連休をこんな部屋で過ごすのは真っ平であるが、しかしどこかに出かける体力も気力もない。実は土曜日は散髪に言ったり医者に行ったりしたのだが、正直なところ日差しを浴びただけで倒れかけた。貧弱ここに極まれりといったところだ。山を駆け巡っていた数年前が今はこんなに遠い。
 しょうがないので、部屋の匂いを消すことにした。まずは恥をしのんで窓を開け、換気をした。そして香を焚いた。線香である。
 ……前置きが長くなったけど、線香置きを姉の部屋から借りた。そのとき、目に付いたマンガ本も借りてきた。無許可だ。うちの姉はイギリスに旅行に行っているのだ。いいなあ、イギリス。