月は無慈悲な夜の女王

 ハインラインの長編である。計算技師のマヌエルと、意識を持った計算機のマイクが月の独立を勝ち取るまでの話。賞取ってたり、SF板の名無しになってたりと評価が高い。
 また読んだ。
 この小説のいいところは、月世界にリアリティがあるところだ。月だと寿命がどこまでも伸びるとか、そんなん嘘だろと今なら簡単に否定できることも、そりゃある。だけど、600ページをかけてしっかりと書き込まれた月世界の習慣は、それが実在しているかのような存在感を持っている。革命の結末を知りたくてページをめくるのも良し、こういった世界観を見渡して感心するも良しだ。
 少しネタバレ。
 マイクはどこに行ってしまったんだろう? どうも作者が彼の扱いに困って消してしまったようにしか見えない。
 だけど、ちょっと面白いことに気づいた。それはこの話が、マイクのジョークから始まっていることだ。マイクのジョークの後片付けをしに、マヌエルがマイクのところへ行く。そしてジョークの研究をマイクは始める。それと同時に、革命が始まるのだ。思うに、この革命自体がマイクにとってはジョークだったんじゃないだろうか。月世界の独立なんて歴史に残るジョークをかまして、それに満足したからマイクは消えてしまった。……マイクが消える理由としては薄いなあ。