渋谷のオシャレメガネ

 メガネが好きだ。
 日記を最近書いていなかったせいだろうか、日記のノリで何かを喋りたかったのだろうか、友達に会ったあとの僕はとにかく喋り続けた。研修で話しかける相手も話しかける話題もないせいだろうか。人とのくだらない会話に僕は飢えているようだ。というか、研修でのみんなの持ちネタはバイクだったりTV番組だったり下ネタだったりで、僕の入る隙間がゼロなのだ。
 僕はバラエティもドラマも見ないし、バイクも車も興味ゼロだし、下ネタなんてものを童貞に期待されても困る。最近は下のほうの立ち方も衰えてきて、このまま童貞で一生を閉じるのもいいかもしれないなとか思っているのが僕なのだ。話題が合うわけがない。せいぜいバイクに女の子を乗せながらドラマの話でもしてろよな、と内心思っちゃうのである。僕は家で2ちゃんねるやってるからさ。
 そんなハイか鬱かわからない状態でパスタ(桜エヴィと大ヴァのアラヴィアータ)を平らげ、ブックファーストで研修用の冊子を買い、これからどうしようとなったところで、僕はメガネを物色することにした。
 僕はド近眼である。どれくらい近眼かというと、メガネ屋に行ってメガネを付け替えても自分で自分の顔を見ることが出来ないくらいだ。鏡に顔を10cmくらいに近づけて、やっと輪郭がわかるぐらいなのだ。友達をつれているときに第三者的な視点からの評価を受けながらメガネ選びをしてみたいなと、常々思って生きてきた。
 でもまぁ、メガネ屋に入ってみると僕はメガネを選ぶのに夢中になってしまって、他の人を退屈にさせてしまったようだ。ここで謝りたい。ごめん。
 とにかくメガネが僕は好きだ。メガネが無ければ生きていけないのだから、まず恩義がある。依存してもいる。コンタクトは好かない。あの付け外しに時間がかかるというのが致命的だ。起きて5秒でつけられる安心感が大事なのだ。そもそも目の中に何かを入れて、転んだりしたらどーなるんだろう。ハードレンズが割れる瞬間を想像すると背筋が寒々とするのは僕だけなのだろうか。
 女の子もメガネをつけている子の方が好きだ。メガネっ娘とか呼ぶ輩もいますが、そんな不純な呼び方はお兄さん好きじゃないな。 図書館で本を読んでるメガネの子なんてクリーンヒットだ。となりに座って一緒に本を読みたい。会話なしで。 そして読み終わった側からさっさと家に帰るのだ。会話なしで。 そしてたまにはコーヒーでも一緒に飲みながら、だるくてだるすぎる一日を漫然と過ごすのだ。少しだけ会話ありで。 そーいう関係をどっかのメガネの子と結びたいものである。そんな子は僕の脳みその中にしかいませんが。 まあ童貞の妄想である。妖精さんである。 
 来週にはメガネを新しくしよう。それが初任給の使い方だ。僕が一生寄り添って生きていくものの一つは、メガネなのだから。


 つーかあれだな、なんで僕の中高時代に、周りにメガネの子がいなかったのだ。おかしいよ、おかしいですよ。ありえないって。そういう子がいれば恋のひとつもしていたはずですよ。こんな半ひきこもり駄目人間になってねえよ! なぜだ、何故にまわりにいなかったのだあ!
 ああ、男子校か……。うん。