革靴の音が響くこと。

 静かな街に革靴の音が響く。そういうのが好きだ。
 四月から新入社員となって研修が始まることもあって、革靴を2足、買い足した。それで研修3日目くらいに階段ですっころんで左足首を捻挫したり、履きなおしてみれば何故か一足のサイズが大きめで交換しにいく羽目になったりした。交換した靴もあんまり足に合わなくて、ひどい靴擦れになったりもした。そんなこんなで、買った二足のうち、一足をまるで使わないまま四月の20日が過ぎた。
 その一足は、全部が革だ。僕の持っているビジネスシューズは基本的にスニーカー形式でゴム底なのだけど、今度買ったのは底まで革のイタリア靴だったりする。捻挫も治ってきたし、そろそろ履いてみっかと昨日はそれに足を預けてみた。
 ちょっぴりキツイ。見た目重視のイタリアンは、こんなきゅーくつな思いをしているのか、それとも奴らは足が細いのか。ハイヒールとか履いてる女性に比べりゃ楽なんだろうけど、まぁ、そのうち革が広がるのを待とう。
 滑りやすい。ゴムと革ならゴムの方が摩擦力があるし、グリップ構造も形作りやすい。
 これならゴム靴のほうがいいじゃん。一足くらい全革靴を持っておくかと買ったけど、これも外れだったかな? とか、弱気になってしまったけれど。
 音がいい。
 革が底の靴は、歩くときにコツコツと響く。コッ、コッ、コッ、と歩く。20時まで残業で、21時に蕨について、静まったベッドタウンを歩く。コッ、コッ、コッ、と歩く。静かな道を歩く。金星を携えた月が照らしている街を歩く。
 いいな、革靴。
 昨日の夜はそんなことを思った。