世界変革の時

 世界の見え方が変わったと書くと大げさになるのだけど、実際にそうなのだから仕方がない。
 世界をどう見るかは人それぞれ、世界を汚いと思うのはその人が汚いから、世界を美しいと思うのはその人が美しいから……世界なんてのは自分の鏡なんですよ、なんて、そんな話もよく目にするけど、さておき。
 昨日の帰りのホームで気がついて、錯覚かと思っていたので日記には書かなかったのだが、今日になっても直っていないので諦めて記すことにする。『僕の目が急に遠近感を意識するようになった』。メガネを変えたわけでも視力があがったわけでもなく、なぜか遠近感だけ強くなった。
 今まではレンズのせいで遠近感と無縁の生活をしていた。野球をやるときも、球を見ても距離がわからないから、勘だけでバットを振っていたくらいだ。ところがところが、である。あれあれあれ、である。えー?、である。
 ホームに入ってくる電車が迫っては去っていくなまめかしさとか、カーテンのひだの波打ち方とか、キーボードで踊る自分の手のブリッジとか、今まで知らなかった凹凸で世の中はいっぱいであったらしい。知らなかった。原因はまったくわからないけど、とにかく世界の見え方が変わったらしい。なんだろう、前段の理論を当てはめれば僕が遠近感溢れる男に変わったからなのだろうか? 遠近感あふれる男ってどういう存在なのだろうか? っていうかほんと原因はなんなのだ? 今までも遠近感があったけど、僕があんまり馬鹿で気がつかなかっただけなのか? 僕はほんとに今までものをきちんと見てきたのだろうか? 僕の記憶は本物? アブダクション受けた? 明日の朝には元通りになっててこの日記はあとで読むと意味不明? 
 世の中は不思議に満ちているけど、明日から山に出かけてきますので日記は2日だけお休みです。山+遠近感、ってステキな組み合わせだと思いませんか。