提出しない出席表が二枚

 例の教育学部夏目漱石専門の教授の講義を平和に受けていたのだけれども、今日はわりと大き目のハプニングが起こってしまった。講義の最中に教室を抜け出る学生がいたのである。石原の千秋教授はやにわ立ち上がり「おい!…おい!」と大層大きな声を張り上げ、それでも学生は泊まらずドアは閉まってしまった。先生は静かな声でこう続けた。「彼か彼女か、常習犯でね」と「僕が板書をしている最中に何度もやってて、気づいてないと思ってるのか知らないけど」と少しタメをつくり、「これから僕がとる行動はふたつあります」と「ひとつは『授業を切り上げる』、もうひとつは『出席を取り直す』です」と「後者にしますので、TAを呼んで来ます」と「彼ひとりのために、授業が中断されるわけです」。先生が教室から出ていき、教室はもう雑然とするしかなかった。彼は自分の講義にプライドというか、誇りを持っているのです。卑下やら自虐やらに逃避しがちな僕としては、ちょっぴり憧れる対応でした。やっぱね、自分の仕事に誇りのある人はカッコいいですよ。
 講義が終わったあと、僕の後ろに座っていた男子学生がとなりの女子学生にこんな話題を振っていた。「そーいえば俺の先輩が本を丸写ししたレポートを提出したんだけど、40枚くらいなんだけどさ、カンカンに怒られたらしいよ。もう一度やったら除籍処分、退学にするって言われたらしい」「すごーーい」
 アカデミズム溢れる人なのだった。
 そんなアカデミズム先生はよく冗談を口にするのだけれども、たまに笑えないときがある。
 「この前、演習で『フジムラ』『フジムラ』って学生が言ってて、誰だろうと思ったら島崎藤村だったよ」これは笑える。あはは。
 「それでさ、この前、演習で『ハナブクロ』『ハナブクロ』って学生が言ってて、誰だろうと思ったら田山花袋*1だったよ」……耳に覚えのない作家キター……その学生笑えねー…

*1:「たやま・かたい」と読む