「世界遺産写真展III」

 世界遺産という番組が大好きだ。究極の雰囲気番組である。ドラマ性のカケラもない。ため息の漏れる映像とゆるやかな音楽がただ流れるのみである。(ただし、文化遺産のときには微妙にドラマが入り込む)
 その写真展が今日まで開かれていて、たまたまタダ券を持っていたため、人を誘って行ってきたわけである。それでデパートなんて慣れない場所に踏み込むはめとなった。
 世界遺産の写真展は写真と映像で構成されており、自然・文化・日本にカテゴライズされて展示されている。自然が20枚程度、文化が50枚程度、日本が30枚程度だっただろうか。映像はそれぞれにひとつずつと、総集編がひとつ。
 写真はサスガに美しかった。いわゆる生写真というものには、ほかの媒体では再現不可能な瑞々しさというか、ねっとりした生々しさがある。PCのモニタで眺めるだけでは写真はもったいないのだ。そーいう細密で輝かしい質感で、画面の構図もバシッと決まっていて、対比も計算されている。プロだからこその撮影場所もあいまって、現地に行くより写真で観たほうがキレイじゃねーの、これ?という世界遺産トリック大炸裂であった。むしろ行ったことのある場所のほうが新鮮だったりするかもしれない。写真の並べ方も計算されている――たとえば、ロッキー山脈とグランドキャニオンが同じ大きさで横に並べられているのは、フィヨルドの青さと岩肌の赤さの対比だし、小さい写真・小さい写真・大きい写真といったリズムを作る工夫にも手抜かりがない。しかもところどころで映像コーナーが挿入されて写真飽きを防いでいる。何から何まで計算ずくである。
 まぁ、どれだけ美しかったかといえば、S君の遅刻にブチギレた僕がものの数秒でクールに落ち着いたぐらいといえば若干わかりやすいでしょうか。なんか洗剤のCMみたいだけど。

  • 気に入ったものリスト
    • 自然:カムチャッカ半島の火山(かたちが富士山的でよろしい)
    • 文化:タイの仏像(一緒に湯でも浴びたいような気安さがある)
    • 日本:縄文杉(でけえ)

「お、都市全体で遺産なんだ」「地震なくてよかったよね」「あ、これもか」「地震なくてほんといいよね」「へぇ、こんな集落が・・・」「地震がないのは「地震以外コメントねーのか!」

  • 駄目だろこれはリスト
    • 自然:フィヨルド系(写真としてはワンパターンだよー)
    • 文化:イスラム系・イタリアの屋内絵画(細かすぎて息が詰まるわ!)
    • 日本:なんか林(林はもういいです……)

「お、氷河地形だ」「へぇー」「U字谷か、また氷河だな」「へぇー」「ケルン大聖堂氷河地形のホルンは混同するよね?」「しないなー(つーか氷河地形しか話題ないのか!)」

 映像はすべてハイビジョンだった。記録媒体はブルーレイで、さすがソニー抜け目ないぜ!といった感じ。現行のDVDではハイビジョン入りきらないから止むをえないって名目だろうけど、あざといですよソニーさん。まぁ、松下の対抗規格より名前覚えやすくていいよねブルーレイ。それはさておき、さすがハイビジョンなのかさすがプラズマテレビなのかはわからないが、展示写真クラスの美しさで風景が流れていくというのは圧倒的な快感があった。河のしぶきがくっきりと見え、紅葉の葉脈がはっきりと見える。一番面白かったのは総集編で、自然・文化・日本すべてをひっくるめてプロジェクターで放送する。プロジェクターなので当然暗室であり、そこだけミニシアターの態である。時間も10分ほどと本格的だ。空から舐めるように庭園→庭園→庭園→ヴェルサイユ宮殿とハイビジョンで撮影されてしまうと、そりゃ革命も起こしたくなるわという気分になる。なんだあのミステリーサークルみたいな庭園は。どこの金持ちだ。

「ハイビジョンはいいねぇ」「いいねぇ」

 僕は小学生に上がったころから眼鏡をかけつづけていて、世界というのはぼやけるものだという思考が染み付いている。遠くのものは見えなくて当然だし、眼鏡がなければ自分の手だってよく見えない。そういった僕に、遠くまでクッキリ見えてしまう写真やハイビジョン映像というのは、眼鏡を換えた瞬間か、台風一過の青空のような、ちょっとした世界の変革を思わせて、非常に楽しい。
 結局写真は入り口からざっともう一度眺め、総集編は二回ほど観た(一回目は前列のおばちゃんの頭が邪魔だったし)。2時間半ほど堪能したので、入場料600円というのはかなりお得だったのではないでしょうか。

そのあと

 メシ食って学校行ったら休講だった。シット!