柵のち映画

 大学に20分早く到着したら、柵が引かれてた。途方に暮れながら突っ立っていると守衛さんがやってきた。僕は柵に腕を乗せながら「文学部は今日休みなんですか?」と聞いた。
「文学部だけじゃないよ」守衛さんは言った。「全学部が閉まってるんだ」
とてもいやな予感がしたけれど、僕はこう聞く方法しか知らなかった。
「何故です?」
創立記念日だからですよ。さっきから何人もやってきてる。教授もだよ」
 しかたないので映画を観て帰ることにした。「アイ・アム・サム」と「21グラム」だ。「アイ・アム・サム」は泣ける映画だった。それで今日は無駄足でなかったということにしたい。
 メモ:
・「21グラム」の中で「残念ですが」「お気の毒です」「ご愁傷様です」が全てI'm (very) sorryだった。正直日本人の僕にもニュアンスの違いがわからない。外人に尋ねられたらどう答えよう?こういうのを杞憂というのだろうか。
・「アイ・アム・サム」でnever losedというフレーズがnever lostと同じ「負け知らず」で訳されていた。アルジャーノンの訳ならこういう場合どうするかな、と思った。サムの言葉遣いに気づいたのが終盤のこのシーンだったので、しまった今まで全然気づかなかったとも思った。クレジットで流れる「i am sam」という題もそれを狙ってわざと小文字にしているのだろうか?
・ドルビーのビートルズはMDのイヤホンで聴くより随分とつややかだ。オーディオマニアの気持ちがわかった。


 そういえば、今日入った映画館は早稲田松竹という二本立ての名画座だった。この映画館は一度閉館している。駅からも大学からも程よく離れた立地条件のためか、たぶんあまり客が入らなかったのだ。それとも名画座なんてもう流行らないのか?僕もあまり注意を払うことなく、気がついたら閉館の知らせが出ていて、次に気がついたら復活していた。しかし、googleにかけてみてわかったけれど、早稲田松竹復活には早稲田大学の学生による支援活動の結果であるらしい。
 今日の僕が「アイ・アム・サム」に涙しながら背後の寝息に殺気を送っていたのも、その人たちのおかげなのだ。ありがたいことであり、ここで感謝の念を述べさせていただきたい。ありがとう。早稲田松竹はいい劇場です。二本立てで学生1100円と安いです。音響もいいです。スクリーンも大きめです。座席はたっぷり空いています。暇な学生はさあ行け、行くのだ!
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