10年前の漫画

 2ちゃんねるの漫画サロン板に「ダイの大冒険連載中」というものがあって、僕はそれが好きだ。
 「連載中スレ」がどのような内容かというと、一日ごとに一回ずつ話のあらすじを書いていき、名無し達がまるでリアルタイムで今日雑誌を読んだかのように反応を書いていくといったものである。一日が一週間というわけだ。一話一話を区切って見ていくことで新たな発見があるのと、あらすじがあるおかげで良く覚えていない漫画でも気軽に参加できるのがウリだ。
 ある程度人数が集まらないといけないので、それなりの人気のある漫画しか連載中スレは立てられない。ジョジョうしおととらなどだ。僕はダイの大冒険スレを毎日楽しみに覗いている。連載中スレに一番馴染んでいる漫画だと思う。
 中高生の頃、ダイの大冒険が嫌いだった。
 まず、ドラクエが嫌いだった。あんな子供向けのゲームやらねえよ、と思っていた。ドラクエ6に見向きもしなかった。ゲームの文法にケチをつけていた。
 ダイのご都合主義が嫌いだった。敵の必殺技を受けてボロボロとか言ってるくせに、身体には何の傷もついていないのがアホくさかった。敵が使うのは暗黒闘気で、味方が使うのは光の闘気というのが馬鹿馬鹿しかった。時折入るしょうもないギャグが本気で寒かった。格好つけばっかりで、気持ち悪かった。序盤の絵は下手だった。伏線の張りかたは乱雑であけすけだ。
 そういうわけで、ダイの大冒険は僕にとってむしろ嫌悪の対象ですらあったのだ。
 ところが、それから10年近くがたって、今になって。
 一体全体どうことなのか、話の筋を覚えているし、印象あるシーンは思い出せてしまったりする。散々あれだけくさしていたわりに、こりゃどういうことだろう。
 ダイの大冒険という漫画は、そりゃ実際鼻につくところは多かったわけだけど、芯の通った質のいい少年漫画だったのである。連載中スレに付き合うために、漫画喫茶に行って単行本を手にとってみれば、よくわかる。悪いところ以上に、いいところがある。どれだけの欠点があっても、面白いならそれでいいのだ。欠点につまずいてそこだけに囚われるのは、視野が狭い。
 いいところっていうのは、ほんとに言葉にしにくい。好きだって言葉は、それ以外の言葉にできない。それができるのは、きっと詩人だけで。そんな僕はダイに関してはどうも欠点以外文章にできない。でも、
 どうも僕はダイの大冒険が好きであるらしい。


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 ダイの大冒険は若干古いだけあって、若干古いネタがおしげもなく使われている。主人公が記憶喪失になったりする。記憶喪失!そんなネタ、いまどき冬ソナぐらいでしかお目にかかれないぞ。