私的オートミールの作り方 くたばれ夏目漱石

 夏目漱石のことはご存知でしょう。僕は漱石を好きません。彼の人は英国に留学していた際、オートミールを「不味い」「家畜の食い物」と評したそうです。オートミールほど簡単に作れて美味しいものはないのに。
 オートミールとは、オート麦を挽き割りにしたものに水・牛乳を加え、おかゆにした料理です。日本ではポピュラーではないため、大きな店でなければ取り扱っていません。箱の側面の説明には水でかゆにして牛乳を注げとあって、漱石も何も考えずにその通りに作ったんでしょう。だけど、暖かい麦粥に冷たい牛乳をかけたら、不味いに決まってるじゃないですか。
 彼のように指示をただ単に辿った挙句「家畜の餌」とほざくような発展性のない人間になってはいけない。冷たい牛乳が不味いなら、最初から牛乳粥にしてしまえばいいのに。
 実際に調理に移ります。オートミール1、牛乳2ぐらいの分量で鍋に放り込みます。中火→弱火→蛍火でコトコトと煮込んでいきます。おたまでかき混ぜにくくなり、泡がぼこんぼこんと息苦しげになってきたら火を止めます。これで終わり。簡単でしょ?
 鍋ごと食卓において、各自おたまで深皿によそって頂きましょう。オート麦の素朴な味が楽しめます。牛乳もついて栄養価も心配なし。主食ですのでサラダなどを添えてどうぞ。
 イギリスにいた小学生の頃、僕はたまに日曜日の朝ごはん作りを買って出た。冬の朝のシンとしずまった空気の中で、台所の床にぺたんと座って。ガスコンロの上のコトコトという音だけが聞こえて。吐く息は白く。牛乳と麦のやさしい匂いが漂って。
 夏目漱石にゃあ、わかるまい。
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 このあいだ、聴講している文学部の講義で「料理の作り方を手際よく600字以内で書け」といった問題が出された。僕もそれなりに頑張って書いたんだけど、模範解答に比べると全然力が足りない。それで復習がてらに上の文章を書いてみたんだけど・・・
 なんつーか、これ調理方法じゃないね。それに気付いて文字を削るのほっぽりました。ずっと年下の人がずっと的確な文章を書けているっていうのは、結構へこむなぁ。商学部で文章の訓練をした記憶がない。