僕と掃除

ケニヤです。
媒体がメールでなくなったので、
この前置きはこれを最後にしようと思う。


ここ数日、部屋の掃除をやっている。


僕は身の回りに無頓着で、読んだ本はそのまま床にほっぽっておくし、
パジャマはその晩に着るだろうと床にほっぽっておく。
結果、床には役割ができてしまう。
本(漫画、小説、テキスト、プリント、何でもござれ)を投げ捨てる場所。
服(外着、パジャマ、明日の着替え、何でもござれ)を投げ捨てる場所。
このほか、雑誌とライトノベル専用の床、
分類に困ったらとりあえずそこに詰め込む引き出しなど、
僕の部屋と言うのは整理されてるのか散らかっているのか、
自分でもよくわからない状態になっている。


6畳ほどの部屋だが、うち2.5畳が本棚や机に占拠されていて、
1.5畳が投げ捨て用のスペースとなっており、
残った2畳が布団を敷いて寝るための隙間となっている。


床がこんな状態だから、本棚や机の上はもっと酷い。
本棚はお受験に参加してきた代償で参考書に占拠されて、
大学で使うテキストは本棚に入りきらずに溢れ返っているし、
机の上は食玩やらMDやらCDやらパソコンやら電卓やら筆記用具やら
ちょっとした万国博覧会の様子を呈している。


部屋を整理しない僕は身だしなみにも気を使わないし、
そういう人は悪くない確率で人付き合いが狭くて下手糞だ。
どうせ誰かを部屋に招く機会も少ない。
部屋がとっちらかっていても、この22年間困ったことはなかった。


でも、いざ試験が始まって、
床からバラバラのゴチャゴチャになったプリントを漁ったり、
机の上でテキストを開けないから、図書館に行く羽目になったり、
そんな目に会うと、僕も少しはこりゃイカンと考えを改めることになる。
あまりにも乱雑な部屋では勉強なんてできないのだ。
試験勉強をする前に、まず第一に掃除をしなければならない。
せめて机の上の雑貨類を脇にどけるとか、
その脇という空間を占領している雑誌類をゴミに出すとか、
そういった行為が求められる。


そういうわけで今までの人生にわたって、
僕が掃除をするときというのは
まさに試験シーズン、
それも特にみっちりと詰め込みをせねばならない試験のときなのである。
僕の部屋が最大に清潔で最大に見通しが良かったときは
センター試験前であった。
(試験後はやる気が燃え尽きて部屋は汚くなった)


今回の試験はひとつひとつの試験はそれなりにヘビーではあったけれど、
選択講義が少なかったこともあって、
そこまでの詰め込みは必要でなかったはずだった。



が、僕はそこにTOEICをかぶせてしまったのである。
それが僕に今回の掃除を決意させた。


身の毛もよだつ戦いが展開された。


去年から無意味にとっておかれた就活DMが紐に縛られて捨てられらた。
これらは机の裏、脇、引き出し、本棚の上にうずたかく積もっていた。
出た埃はまとめればバレーボールくらいにはなったんじゃなかろうか。


大学受験の塾のプリントが捨てられた。
これらは厚さが4cmあるバインダーが14冊に綴じられており、
それが積まれたときには僕の膝の高さを超えていた。
中身のプリントを捨ててもバインダーをどうすればいいのかいまだにわからない。


床に投げ出されている服の暫定居住区を考えなければならなかった。
とりあえず扇風機の上に投げておいた。
下から、長ズボン、上着、半ズボン、シャツの使用頻度順だ。
パジャマは夏はただの物置台となるヒーターの上。


4日間におよぶ熾烈な戦いだった。
部屋のいたるところに予想外の遺物が待ち構えており、
あらゆるところに埃が自己を主張していた。
俺はここに4年いるんだぞ、お前は今更何をやっているんだ、
そう彼らは言っているようだった。


そうだ、僕が部屋を最後に徹底的に掃除したのはセンター試験のときだった。
あれは2000年の1月だっただろうか。あれから4年半が経ってしまったのだ。


大学で一年多くすごして、僕は何を得たんだろう。
ただ埃を貯めただけじゃないだろうか。
埃にまみれた手を見つめて、そんな風に思った。



机の引き出しには、古いコピー誌があった。
高校の頃、友達と一緒に作ったコピー誌。
みんながそれぞれ文章を好きに書いていたコピー誌。
ものぐさな僕は一箇所にまとめなかったから、部屋のあちこちに散らばってる。
号ごとに取り出していくと、
底には何月号だったかの一部分だけがあった。
A4で3枚、6ページ分。


むかし、僕が書いた文章のせいで友達と喧嘩した。
その直後に友達が書いた小説がそこにあった。
あの当時、僕はその内容を僕へのあてつけだって言って、
それで喧嘩は長引いたのだった。
いつかしっかりした反論を書いてやろうと、
該当部分だけを抜き出して引き出しに入れていたのだ。


苦笑いが浮かんできて、
僕は他の号とまとめてそれをコピー誌保管用の箱に投げ込んだ。
読み返す気にはなれなかった。


埃ばかりが積もって、昔のことはもうよくわからない。
それでも僕はまだそんなことをひきずっているのだ。まったく馬鹿らしいことに。


まったく、昔の自分を見ると
まるで変わってなくて厭になる。


ふと思ったけど、僕が掃除をあまりしないのはそのへんに理由があるのかもしれない。





わけがなくて、やっぱりただの不精なんだけどね。